エドワードグリーンを象徴する一足、ドーバーのハーフラバー補強

※以前にも同様の修理内容を紹介しておりますので、あわせてご参照ください。
エドワードグリーンのアイコンモデルといえば、Doverを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。
精緻なスキンステッチが施されたUチップの代表格であり、ブランドを語るうえで外せない一足です。
しかも今回は、某セレクトショップの別注モデル。
アッパーにはユタカーフが使われており、ロシアンカーフを想起させるような型押しの表情が実に魅力的です。
現行グリーンの半カラス仕上げに、どう補強を加えるか

ソールは現行エドワードグリーンらしい、半カラス仕上げのレザーソールです。
今回はこのソールに、ハーフラバー補強を施します。
立場上何を言っているのかという話ですが、エドワードグリーンのレザーソールはそれ自体が非常に上質で、そのまま履いても気持ちの良いものです。
もし自分の靴であれば補強をせず、そのまま使ってしまう気もします。
とはいえ、ソール補強に対する考え方は人それぞれです。
耐摩耗性を求める方もいれば、滑りにくさを重視する方もいますし、安心感を優先する方もいます。
同じオーナー様の中でも、この靴は補強する、この靴はあえて補強しないといった基準があることも珍しくありません。
だからこそ、手を加える以上は責任をもってきれいに仕上げたい、というのが私なりの矜持。
Vibram7673による、素直なハーフラバー補強

その仕上がりがこちらです。
今回使用したのは、Vibram7673のハーフラバーソールです。
厚みは1.8mmで、ハーフラバーとしてはもっともベーシックな部類に入る仕様です。
耐久性と屈曲性のバランスを考えると、非常に扱いやすく、ちょうど良い落としどころではないでしょうか。
ハーフラバーは一見すると単純な補強ですが、収め方によって靴全体の印象は大きく変わります。
単に張るだけであれば処理自体は難しいものではありませんが、どこで終わらせるか、どのラインに合わせるかによって、仕上がりの自然さは大きく変わります。
補強である以上、機能は前提として確保しつつ、それをどこまで元の意匠に馴染ませられるか。
その調整が、この作業の本質だと考えています。
コバ周りの見え方まで含めて、仕上がりを整える

横から見ても、隙間なく収まり、コバの削りにもムラなくきれいに仕上がったと思います。
やはりエッジが整うと、靴全体がシャキッと引き締まって見えますね。
ハーフラバーを張ったことによる違和感も、極力抑えられているかと思います。
補強という実用的な修理であっても、見え方が粗いと靴全体の印象まで鈍くなります。その意味でも、仕上げの整い方は非常に大切な要素です。
半カラスの意匠を壊さないための、ラウンド加工

今回も、ハーフラバーとウエストの境目はラウンド加工で仕上げています。
半カラスのライトブラウンの範囲を、できるだけきれいに収めるためです。
この処理のメリットは、単に見た目の柔らかさだけではありません。
コバから見た際に、ハーフラバーの終点を「コバの切り返し」に合わせやすいという利点があります。
文章だけだと少し伝わりづらいのですが、この靴はウエスト部分が丸コバ、フロント側がフラットなコバという仕様になっています。
つまり、コバの形が変わるポイントにハーフラバーの終点を持ってくることができるのです。
靴の作りによっては例外もそこそこあるのですが、簡単にいえば、ひと工夫加えることで全体のおさまりをより自然に見せやすくなる、という理解で差し支えありません。
意匠を尊重しながら行う補強

高級靴になればなるほど、ソールにも意匠が詰め込まれています。
アッパーの美しさだけでなく、底周りの設計や見え方まで含めて、その靴らしさは成り立っています。
だからこそ修理の場面でも、ただ機能を足すのではなく、もともと備わっている意匠を壊さないことが大切。
メーカーが作り込んだ線や構成に対して、こちらも修理で応える。
その積み重ねが、メーカーに払えるひとつのリスペクトでもありますので。
今回のようなハーフラバー補強は、内容自体は定番です。
ただ、定番の修理だからこそ、どこまで自然に、どこまできれいに収めるかで印象は変わります。
エドワードグリーンのような一足であればなおさら、その差は仕上がりにはっきり表れてくるように思います。
関連記事は下記リンク先をご参照ください。
Edward Green(エドワードグリーン)WESTMINSTER|半カラス仕上げに配慮したハーフラバー修理
Edward Green(エドワードグリーン)Cadogan オールソール|マーティンオークバークレザー仕様
Edward Green(エドワードグリーン)旧工場製デッドストックを黒染め|色補正と仕上げの実例

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