クラークス ナタリーという厄介で面白い修理

当ブログでご紹介している修理は、あくまで靴修理の中の一部に過ぎません。
実際の現場では、素材・構造・履き方によってまったく異なるアプローチが求められます。
それがこの仕事の大変さであり、同時に飽きない理由でもあります。
とはいえ正直なところ、手間と神経を要するがゆえに構えてしまう作業があるのも事実。
今回のクラークス ナタリーのオールソールは、まさにその代表例と言える内容です。
反り上がる生ゴムソール

ナタリーのソールは、生ゴム(クレープソール)で構成されており、
特徴的なのはソールが360度側面へ反り上がる独特の形状。
柔らかい素材である生ゴムとはいえ、この立体形状を再現するのは簡単ではありません。
単純な張り替えとは異なり、「形そのものを作る」工程が必要になります。
その難易度の高さから、修理不可として断る業者も少なくなく、
メーカー修理でも対応してもらえないという困った状況…
結果として、修理先が見つからない“修理難民”になってしまう方も多いモデルですが、
私、やっちゃいます…!
平面から立体を作る型取り

まず行うのは、既存の立体ソールを一度分解し、
平面の生ゴムへとトレースする工程です。
縫い付けではなく接着で仕上げる構造のため、
この型取りの精度がそのまま仕上がりを左右します。
わずかなズレが全体のバランスに影響するため、
微調整と諸々の小細工を繰り返しながら、靴本体に沿うよう整形していきます。
オリジナル形状の再現と黒生ゴムソール

仕上がりは写真の通り。
全方向にしっかりと生ゴムが沿い、ナタリー特有のフォルムを再現できたかと。

今回は黒色の生ゴムを使用しています。
生ゴムは使用とともに汚れで黒ずんでいく素材です。
であれば、最初から黒を選択することで経年による変化が目立ちにくい、
という実用的なメリットがあります。
ミッドソールまで削れた場合の対応

別の個体にはなりますが、生ゴムを突き破って
ミッドソールまで削れてしまったケースもあります。
こうした場合でも、状態に応じて穴埋めを行うことで、
再び使用可能な状態へ持っていくことができます。
ダメージが大きく見えても対応できるケースは多いため、
穴が空いてしまった段階で諦めなくて大丈夫。
生ゴムのカラーバリエーションについて


現在、生ゴムは3色から選択可能です。
・黒
・アメ
・タバコ
基本的にはオリジナルに近い色でのご提案となりますが、
今回のようにあえて暗めの色を選ぶケースも増えています。
生ゴム特有の質感があるため、多少色を変えても違和感が出にくく、
仕上がりとして自然に馴染むのも特徴かと。
生ゴムという素材の現状

最後に少しだけ素材の話を。
生ゴムは近年、価格の上昇が著しい材料のひとつです。
それに伴い、クラークス自身も生ゴム以外のソールを採用したモデルを増やし始めています。
今後、現在のように安定して入手できるかは不透明な部分もありますが、
仕入れが可能なうちはしっかりお修理させていただきます。
ナタリー修理難民の皆さま、ぜひ一度ご相談ください。
関連記事は下記リンク先をご参照ください。
Red Wing(レッドウィング)891 オールソール|Vibram377Kで丸コバを再構築

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