修理しながら長く履ける靴

長年履かれた革靴には、代替の利かない味があるものです。
グッドイヤーウェルテッド製法というのは、そもそもソール交換を前提に作られている靴。
むしろ修理して長く履き込まなければ、その真価には辿り着けないのではとすら思わされます。
今回のチャーチなんて、まさにそんな一足でした。
歴史のあるブランドですから、ヴィンテージ品も含めてしばしば修理させていただく機会があります。
摩耗は、見えているところだけとは限らない

写真ではヒールの摩耗に目が行くかもしれません。
しかし前足部もダシ糸は切れ、中央部分は今にも穴が空きそうなほど薄くなっていました。
もともと5mmほどあったソール厚が、部分的にはほぼゼロ。
地面からの衝撃を吸収する層がほぼ失われた状態で歩き続ければ、膝や腰への負担にも波及しかねません。
足の健康の重要性は、皆さまご存じの通り侮れないものです。
根源的には、靴修理というのは健やかに生活するためのもの。
そう考えると、こちらの背筋も自然と伸びる思いがします。
マーティン社オークバークレザー、その硬さと向き合う

使用するのはレザーソールの最高峰、マーティン社のオークバークレザーソール。
緻密な繊維質ゆえ、他のレザーソールよりも耐摩耗性に優れています。
個人的にはレザーソール派なのですが、このソールは適度な硬さと屈曲性のバランスが良い。
いかにもレザーソールでしか成しえない味わい、といいますか。
しかしその硬さゆえ、作業上は靴の形状に沿わせにくいという難しさもあります。
そこで私は、オークバークレザーを使用する場合のみ、水に浸して柔らかくし、写真の穴ぼこ(ポン台)という道具でソール全体に丸みを作ります。
穴の上にソールを置き、ハンマーで叩く。
この下準備をすることで無理なくアッパーに接着でき、また美しいソール形状も作りやすくなります。
ラバーよりレザーのオールソールのほうが金額が上がる傾向にありますが、それは材料原価だけの話ではなく、こういった仕込みや仕上げのひと工夫が何かと多いことも理由の一つです。
仕上がりと仕様について


今回はヒールのトップリフトのみラバーのハイブリッド仕様です。
歩行時はかかとから接地するため、トップリフトのみラバーでも意外とグリップは効いてくれます。
レザーヒールは見た目こそ美しいものの、雨天時などはやはり滑りやすい。
実用性とレザーの表情、そのバランスを取るための仕様です。
艶めくダークブラウンと、オープンチャネル

ソール自体は元と同じダークブラウンで染色。
レザーの上品な艶感には、ぐっと心を掴まれるものがあります。
ダシ糸は溝に収まって視認できるオープンチャネル仕様です。
また、光の加減で見づらいかもしれませんが、飾りとしてバンクウィールも忘れずに施しています。
履いて摩耗すればいずれ消えてしまう装飾ですが、これはもうロマン…
機能性の追求だけでは、ものごとつまらなくなってしまう。
そう思うことがよくあります。
ツメコバに宿る、イギリス靴らしさ

コバは凹凸のあるツメコバを再現しました。
イギリス靴にはしばしば見られる仕様。
なんとも品よく見えるので、個人的に好きな作業の一つでもあります。
興味のない方からすれば無駄のオンパレードかもしれませんが…
美観と機能の両立と追求は、修理人の命題でもあります。
着用時にオーナー様のテンションが上がるように、これからもまずは丁寧に仕上げることを心掛けたいものです。
料金・納期
料金:オールソール(マーティンオークバークレザー、トップリフトアップチャージなし)
24,200円(税込)
納期:約4週間
関連記事は下記リンク先をご参照ください。
Edward Green(エドワードグリーン)Cadogan オールソール|マーティンオークバークレザー仕様
Church’s(チャーチ)Consul|イギリス製レザーリフトで整える足元の輪郭

修理のご相談は、Webフォーム または LINE から承っています。
仕上がりのイメージやご希望の仕様がある場合は、写真を添えていただけるとご案内がスムーズです。


コメント