ドレスシューズの加水分解修理|madras(マドラス)のストレートチップを再生

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靴底がベタつく、剥がれる——加水分解のサイン

今回お預かりしたのは、国産ブランド「madras(マドラス)」のストレートチップ。
ソールがベタつき、靴底が剥がれている状態でした。典型的な加水分解による劣化です。
ドレスシューズの多くは、見た目以上に接着剤や中底材の経年変化に影響を受けやすく、湿気や気温差によって素材が分解されることがあります。
特に数年履かずに保管していた靴は、履こうとしたタイミングで突然ソールが崩れることも少なくありません。

修理方針:オールソールが適しているが、今回は部分再生

構造の再構築という意味ではオールソールが最も確実です。
ただし今回は予算のご希望を優先し、劣化したウレタンパーツを除去 → 充填(詰め物) → ハーフラバーで蓋をするという部分修理プランを選択しました。外観は既存の雰囲気を保ちつつ、「もう一度履ける状態まで戻す」ことを目的にしています。

作業内容

①劣化ウレタンの完全除去

ウレタン層を可能な限り除去。
残留すると再接着に影響が出るため、クリーニングと下地処理を丁寧に行います。

②充填(詰め物)

除去で生まれた空隙を充填。
靴のバランスと屈曲性を損なわない範囲で、適切な詰め物(今回はコルク)を選択します。

③ハーフラバーで“蓋”

最後はハーフラバーを張って完了。
踏まず以降の前足部を覆うことで、路面との摩耗と充填層の露出を防ぎます。

メリットと限界について

オールソールほど大がかりではない分、費用は抑えられ、納期も短く済みます。
一方で、あくまで「延命」のための処置であり、劣化が広範囲に及ぶ場合や、中底まで傷んでいる場合は、オールソールをおすすめするケースもあります。
今回はあくまで“つなぎ”の修理。
長く履きたい靴なら、いずれはオールソール交換を考えていただいた方が良いかもしれません。
「とりあえず履けるようにしたい」「急場をしのぎたい」
そんなときの選択肢として、こういう修理もあります。


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