約20年履かれた一足

ベルルッティの名作、アレッサンドロ。
さらに、迫力満点のノルベジェーゼ製法。
さらにさらに、オーナー様によれば20年ほど履かれているとのこと。
職柄、ベルルッティの靴を拝見する機会は時折ありますが、ここまでしっかり履き込まれた個体はなかなかありません。
ヴェネチアレザーもかなりエイジングが進んでおり、靴全体から相当な年季を感じます。
今回は、トップリフト交換のご依頼です。
もう一度リフト交換で

ソールはウェスト部分にクラックが入っており、こちらもかなり履き込まれた状態です。
ただ、前足部にはすでにハーフラバーが貼られており、今回はオールソールではなく、もう一度トップリフト交換で粘りたいとのご希望でした。
私は普段から、状態を見たうえでベストと思う修理方法をご提案できるよう努めています。
とはいえ、最終的に修理内容を決めるのはオーナー様です。
靴の履き方も違えば、その一足に対する考え方や事情もそれぞれあります。
物理的に難しいものはありますが、私はあくまで選択肢を提示する立場でいたいと思っています。
その中で、ぜひ一緒に最適解を探していきましょう。
積み上げをレザー1枚分追加

今回はトップリフト交換に加え、こちらからの提案で、その上にあるレザー積み上げを1枚分追加することになりました。
別に身長を盛りたいわけではありません。
少しややこしい話になるので細かな理由は割愛しますが、長年履きながら修理を繰り返している靴では、積み上げが少しずつ低くなり、靴全体のバランスが変わってしまう場合があります。
今回も最初に靴を置いた際、少し違和感がありました。
確認するとヒールが低めになっており、前足部の接地ポイントも後ろへずれていました。
履き込んだ靴はソールが摩耗しますし、中底も沈みます。
それ以外にもさまざまな要素が重なり、新品時とは靴のバランスが変わっていることがあります。
これは良くも悪くも、長く履かれた靴ならでは。
そこで今回は、レザー積み上げを1枚追加し、靴全体のバランスを補正しました。
トップリフト交換後の仕上がり

トップリフトにはVibram 5342を使用しています。
通称「アリエルリフト」という、なかなかかわいい名前の部材。
修理部材としてはメジャーなものなので、見たことのある方もいらっしゃるかもしれません。
デザインはシンプルで、ドレッシーな靴にも合わせやすい仕様です。
全面がゴムなので、グリップや耐摩耗性といった実用面でも信頼のおける部材ですね。
追加した積み上げも自然に馴染む

今回追加したレザー積み上げも、仕上がりを見る限りではほとんど違和感なく馴染んだと思います。
薄い色で仕上げる場合は、元の積み上げと新しく追加した革で種類が異なるため、質感の差が見えやすくなることがあります。
今回は濃茶仕上げなので、その点も問題なさそうです。

積み上げを1枚追加したことで、靴を置いた際のバランスも改善されたかと。
今回のように、写真だけでは分からず、実際に靴を拝見して初めて気付く部分もあります。
何か気になるところがあれば、一応こちらから提案はさせていただきます。
押し売りではありませんので、そのあたりはお手柔らかに…
スタンダードケアもあわせて

ちなみに今回は、当サイトへいただくご依頼としては珍しく、靴磨きも一緒にご依頼いただいています。
通常も、お返しする靴は簡易的に磨いてから発送していますが、本格的な靴磨きについては別途メニューをご用意しています。
今回はクリームフィニッシュによるスタンダードケアです。
しかしながら、この履き込まれたヴェネチアレザー。
面白いくらい光りますねぇ…
新品の均一な革とはまた違った、長年履かれた靴ならではの表情があります。
約20年履かれてきた一足。
今回はトップリフト交換と積み上げ調整、そしてスタンダードケアまで含めて仕上げました。
料金・納期
Vibram 5342 アリエルリフト:3,300円
積み上げ追加1枚:1,650円
スタンダードケア:2,200円
※全て税込み
納期:約1週間
関連記事は下記リンク先をご参照ください。
John Lobb(ジョンロブ)NASEBY|プレステージラインを尊重したトップリフト交換
Tricker’s(トリッカーズ)バートン|ダイナイトヒールの交換修理と仕上げの考え方
forme(フォルメ)Blucher ヒール修理|ダヴテイルリフト交換と積み上げ補修の実例


