ビスポークシューズの底付け

当ブログも今回で100記事目。
まずは、これまで記事をご覧くださった皆様、そして修理をご依頼いただいた皆様に心より感謝申し上げます。
節目というには少々大げさですが、今回は普段の修理記事とは趣向を変え、約1年前、2025年に経験したビスポークシューズの底付け作業について二部作で記事を書きます。
普段の修理事例ではなく、自分にとって原点に近い経験を書き残しておこうと思いました。
ちょうどこのサイトを立ち上げる前のことです。
私にはお世話になった靴職人の方がいます。
その方は現在、本場イギリスの靴好きなら誰もが知るブランドのビスポーク部門で働かれています。
渡英前の記念として、アッパーから中底までを製作していただき、その先の底付け工程を自分自身で行ってみるという貴重な機会をいただきました。
結果から申し上げると、私が想像していた以上に修理とは異なる視点や作業性が求められる世界でした。
もちろん初めての経験ですので、製靴を専門とされている方から見れば未熟な部分ばかりかと思います。
それでも私自身のキャリアの中では間違いなく節目となった作業であり、思い入れも深い題材です。
1年も前の出来事ですので、自分の中ではすでに懐かしい記憶になっていますが、よろしければお付き合いください。
ビスポークシューズの底付け工程
今回は工程解説をするような立場ではありませんので、ギャラリーを見るような感覚で写真をご覧いただければと思います。
普段行っているオールソール修理と近い部分もありますが、実際に作業をしてみると全く別物。
修理は完成された靴を前提に考えます。
一方で製靴は、まだ存在しない完成形を想像しながら進めていかなければなりません。
どの工程でも共通して感じたのは、一つひとつの判断や作業が後工程へ直結するということでした。
ほんのわずかなズレや処理の甘さが、その先の工程で大きな修正を生むこともあります。
慣れの問題もあるのでしょうが、こうした作業を日々積み重ねている製靴職人の方々には頭が上がりません。







修理人から見た製靴という世界

これにて今回の題材の前半記事を終えたいと思います。
私が担当したのはあくまで底付け工程のみですが、それでも製靴と修理は別物だと感じました。
自分の靴なので笑えますが、結構やらかしも多く…
※ちなみに学びを少しでも修理に還元できるよう、使える作業にはフィニッシャーなどの機械を導入しています。
もともと私はゼロからイチを生み出すよりも、今あるものを調整、アレンジする仕事の方が向いていると思い、修理の道を選んだ部分があります。
だからこそ、何もない状態から一足の靴を作り上げるという行為には特別な尊さを感じます。
靴でありながら、その人の思想や技術が形として残る点に魅力を感じます。
時代の変化とともに、こうした伝統的なものづくりは少しずつ数を減らしている現実もありますが…
それでも私は、この文化は残り続けるべきだと思っています。
たとえ大きな流行にならなくとも、本当に価値を感じる人たちがいる限り、その火が消えることはないはずです。
革靴文化を支え続けてきた製靴職人の方々へ敬意を払いながら、私は修理という立場から、その先の未来へ繋ぐ役割を担えたらと。
今回ご紹介したのは、私が経験した底付け工程の記録です。
次回は、この靴がどのような姿になったのか。
完成した一足の写真とともに、その後のお話を綴ります。
関連記事は下記リンク先をご参照ください。
ビスポークシューズの底付け工程【後編】|完成した一足と修理人としての現在地

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