カテゴリー: 靴修理

  • チャールズパッチ

    チャールズパッチ

    今回はチャールズパッチという修理について。
    靴のブランド名は不明ですが、1年以上前にお預かりした靴です。

    ご覧の通り、アッパーに深いクラックが入っていました。
    こうした場合に行うのがチャールズパッチ。
    名前の起源については今さら私が説明するまでもありませんが、靴好きの方なら一度は耳にしたことがあるはずです。

    この修理はお客様との打ち合わせがとても大切になります。

    「お任せで」と言っていただければもちろん対応可能ですが、せっかくならば画像検索などで事前にイメージを膨らませていただくのもおすすめです。

    パッチの形や位置によって靴の印象が大きく変わるため、納得感のある仕上がりにするためにも、ぜひ一緒に検討したいところです。

    チャールズパッチは当然ながら、見た目にも大きな変化をもたらします。

    もちろん、デザイン的になじむようにいろいろと工夫はしますが…

    クラックは発生しないに越したことはないので、日頃のケアを怠らないようにしたいですね。
    普段からクリームやオイルで保湿し、革を乾燥やひび割れから守ることが一番の予防策です。

    ・クラックへの代表的な処置がチャールズパッチ。
    ・デザイン性が強く、お客様との相談が必須。
    ・「お任せ」も可能だが、せっかくならイメージ共有を。
    ・根本的には日頃のケアが最も大切。
    靴を長く愛用するために、補修の知識もぜひ頭の片隅に置いていただければと思います。

  • ゴルフシューズ化

    ゴルフシューズ化

    ナイキのスニーカー。

    今回何をしたか。

    これが…

    こう。

    お気に入りの一足をそのままゴルフ場で履きたい、という声は近年増えているそうです。
    靴修理業界でもちょっとしたトレンドになりつつある。

    vibram 419C BRANDY

    フラットな底のスニーカーであれば取り付けが可能で、見た目を崩さずに仕上げることができます。
    昔ながらの鋭いスパイクは芝への配慮から現在ではNGのゴルフ場が多く、スパイクレスやソフトスパイクが主流になっているらしい。(私はゴルフを嗜まないもので…)
    ・お気に入りのスニーカーをそのままコースに持ち込める。
    ・純正ゴルフシューズとは違ったファッション性。
    ・歩きやすさや履き心地を損なわない。
    道具に愛着を持つことは、プレーをより楽しむことにもつながるでしょう。

  • シュガーヒル トップリフト交換

    シュガーヒル トップリフト交換

    東京発のファッションブランド SUGARHILL(シュガーヒル)。

    アメリカンワークやミリタリーの要素をベースにしつつ、現代的に再構築されたデザインが特徴。
    なかでもデニムの質の高さでよく知られているようで、私も履いてみたい…

    今回のご依頼は トップリフト交換。

    このローファーはテーパードヒール仕様で、積み上げ部分にはアイコニックな丸頭真鍮釘があしらわれていました。
    作業前に一度これを外し、リフト交換を進めていきます。

    使用したのは イギリス製のレザーリフト。
    ゴムの面積が控えめな、ドレッシーさを重視したタイプを選びました。
    摩耗対策をしつつ、見た目の雰囲気を損なわない仕上がりになります。

    また、ヒールの積み上げ部分がやや剥がれていたため、接着による補修もサービスで行いました。

    こういう場面には時折出会います。
    アメリカ靴でよくありますかね、特にヴィンテージ靴。


    最後はコテ類を用いてエッジを整え、光沢を与えます。

    カジュアルな要素を持つブランドながら、靴の仕上がりとしては非常に ドレッシーでエレガント。

    ヒールまわりが引き締まることで、靴全体の雰囲気もより一層洗練された印象となりました。
    スエードの柔らかさと、ヒールの端正な仕上げとの対比。
    このバランス感がたまらんです。
    カジュアルとドレスの狭間を行き交うこの靴で、オーナー様には色々なコーディネートを楽しんでいただきたいですね。

  • カビ処理

    カビ処理

    今回は SARTORE(サルトル)のロングブーツ のご依頼です。

    個人的にレディースのロングブーツのなかではタニノクリスチーと並んで好きなブランド。
    大人の魅力が詰まった一足だと思います。

    しかしながら、アッパーとソールに白いカビが広がってしまっていました。

    特にソール面は全体的に粉をふいたような状態で、保管環境の影響が見て取れます。
    ただ幸いなことに、ブーツの内部はとても綺麗な状態を保っていました。
    インナーにカビが侵食していないのは大きな安心材料です。

    革靴に生えるカビは、ただの表面汚れとは違います。
    特にメンズのグッドイヤーウェルテッド仕様では、中物(コルク部分)まで侵食しているケースもあります。
    そうなると表面処理だけでは足りず、オールソールと併せた対応が必要になることも。

    白カビの段階なら除去が可能ですので、専用のカビ処理剤を用いて全体を丁寧にクリーニングを。

    向かって右がクリーニング直後。

    表面の白カビが消え、すっきりと落ち着いた表情になりました。
    また、しっかり乾燥させた後には革に潤いを与え、全体を磨き直しました。

    コバ部分はカビで色抜けしていたのでインクとワックスを入れ直し、接地面にもオイルを補充しています。
    ブーツ本来の輪郭が引き締まり、見栄えが格段に良くなりますね。

    革靴は湿気にとても敏感です。
    置き方や空気の流れを少し工夫するだけで、長く美しい状態を保つことができます。

  • ドレスシューズの加水分解

    ドレスシューズの加水分解

    メイドインジャパン、マドラスのストレートチップ。

    アウトソールに入っていたウレタンパーツが加水分解でボロボロに…
    触ると指にくっついてくるような、あの独特の劣化です。
    本当はオールソールするのが一番スッキリするのですが、タイミングや費用のこともあり、今回は応急処置で。

    崩れたウレタンを全部削ぎ落とし。
    詰め物の接着のためやすりがけしておきます。

    ぽっかり空洞になってしまうので、そこに詰め物をして平らに整えます。

    調子に乗ると詰め物を削りすぎちゃうので注意しながら…

    最後はハーフラバーを張って完了。
    これでとりあえずは安心して履けます。
    見た目にも自然に仕上がりましたし、グリップ力も復活。
    ただ、これはあくまで“つなぎ”の修理。
    長く履きたい靴なら、いずれはオールソール交換を考えていただいた方が良いかもしれません。
    「とりあえず履けるようにしたい」「急場をしのぎたい」
    そんなときの選択肢として、こういう修理もあります。

  • オーロラシューズを黒染め

    オーロラシューズを黒染め

    AURORA SHOE CO. Middle English
    アメリカ・ニューヨーク州郊外のオーロラという小さな町でハンドメイドされている靴。

    このオーロラシューズは私物で、作業のときにいつも履いている一足です。
    もともとの色(モス)も気に入っていましたが、ここ数年気付けば黒の靴ばかりを履くようになっていました。
    仕事柄、靴の色味ひとつにも自分の軸が表れますし、思い切って染め変えてみることに。

    染め替えの肝となるのは「脱色工程」。

    革の表面に乗っている顔料や仕上げ材を落とすことで、新しい色がきれいに浸透していきます。
    ただし、これは同時に大きなリスクを伴う作業でもあります。
    強すぎれば革を痛め、ひび割れや質感の劣化につながる。
    かといって弱ければ色がのらない。
    その加減が仕上がりを左右する緊張感のある工程。

    深みのある黒に生まれ変わり、仕事靴としての存在感がぐっと増しました。

    今回のように「薄い色 → 濃い色」への変更、かつスムースレザーであれば染め替えは可能です。
    逆に黒から明るい色に戻すことはできませんし、特殊素材ではこの方法は使えません。
    「色を変えたい」というご相談を受けるときは、素材や色の方向性が適しているかどうかをまず確認します。

    毎日使うものだからこそ、自分が一番落ち着く色で履き続けたい。

    そう思わせてくれる一足です。