バーウィックのローファーを、少しだけ自分仕様に

バーウィックのローファーをお預かりしました。
いわゆるコインローファー、ペニーローファーと呼ばれるデザインですが、オーナー様はサドル部分に寛永通宝を入れて履かれているとのこと。
スペイン靴に日本の古い硬貨というなんとも渋い組み合わせは初めて目にしましたが、不思議としっくりきていて、思わず唸らされました。
そんなオーナー様から、「せっかくなら少しカスタム要素を加えたオールソールをしたい」というご相談をいただき、今回の修理が始まりました。
元ソールの状態

元々はラバーソール仕様で、ウエスト部分のみレザーが埋め込まれている、やや珍しい構成です。
ただしラバーは経年による劣化が進行しており、このまま履き続けるのは難しい状態でした。
素材劣化だけはどうしても避けられないため、部分修理ではなく、必然的にオールソールを選択する流れとなります。
解体で見えてくる靴の個性

まずはソールを解体します。
シャンクは保護シートの下に仕込まれており、割れなどの問題は見られなかったため、そのまま流用することにしました。
シャンクの素材や仕込み方はメーカーごとに個性があり、解体作業はその違いを読み取れる工程でもあります。
修理する側としても、毎回小さな発見があります。
ミッドソール追加と、先回りした構造設計

コルクを詰め直した後、ミッドソールを追加します。
元の仕様も近い構成でしたが、今回は完成を見据えてこの段階で出し縫いをかけています。
理由は後述します。
Vibram #528K

今回使用するアウトソールは Vibram #528K。
オーナー様から「ローファーにラグソールを付けてみたい」というご希望がありました。
ただ、ラグソール系は総じて重量があります。
特にローファーは甲周りでフィットさせる靴なので、重いソールを付けると、かかとが脱げやすくなる傾向があります。
その点を踏まえると、一般的にはあまりお勧めできない組み合わせです。
しかし Vibram #528K は例外的な存在。
ゴム入りEVA(スポンジ素材)を用いたソールで、ラバーソール比で約50%軽量とされています。
軽さだけでなくクッション性も高く、今回のご希望を満たすうえでは最良の選択と判断しました。
出し縫いの理由と、将来を見据えた修理
先ほど触れた出し縫いについて補足します。
スポンジ系ソールは、そもそも縫わない(縫えない)ケースが多いのです。
今回はレザーミッドソールまで縫う構成にしています。
こうしておくことで、次回オールソールの際は最下層のアウトソールのみを剥がし、新しいソールを接着するだけで対応が可能になります。
ソール解体時はウェルトなどに少なからず負荷がかかりますし、修理工程がシンプルになることは、結果的に費用面でもメリットにつながります。
レッドウィング(アイリッシュセッター)などでよく見られる仕様ですね。
ラギットへと振り切ったローファー



仕上がりはいかがでしょうか。
好みは分かれると思いますが、ドレス寄りだった印象は一変し、かなりラギットなローファーに生まれ変わりました。
オーナー様のイメージに近づけたカスタムになり、喜んでいただけたのが何よりです。

履き心地についても「見た目よりずっと軽くて、歩くのが楽しい」と感想をいただき、こちらとしても嬉しい限り。
こうした“少しだけ振り切る”カスタムも、しっかり打ち合わせを行ったうえで対応しています。
気になる方はお気軽にご相談ください。
関連記事は下記リンク先をご参照ください。
Berwick(バーウィック)タッセルローファー|ダイナイトヒール交換と細部仕上げ
WH(ダブルエイチ)オールソール|純正Vibram8303で履き心地を再構築

修理のご相談は、 Webフォーム または LINE から承っています。
仕上がりのイメージやご希望の仕様がある場合は、写真を添えていただけるとご案内がスムーズです。



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