丸コバの美しさを損なわずにラバーを張りたい
スエードの外羽根プレーントゥ。

切り返しに沿ったパイピングが印象的で、柔らかな質感の中に上品さを感じる一足です。
このパイピングラインに繋がるような丸コバもおしゃれです。
丸コバとは、コバ(靴底の縁)を丸みをもたせて仕上げる方法のこと。
特にスエード素材の靴とは相性がよく、陰影が自然に溶け合うような上品な雰囲気を演出します。
ハーフラバー修理と丸コバの関係
ハーフラバー修理は、ソールの前半部分にラバーを張り付けて補強する方法です。
雨の日でも滑りにくく、ソールの摩耗を防ぐ実用的な修理ですが、丸コバ仕上げの靴ではわずかな厚みや角度の違いでも印象が変わるため、
仕上げ方には慎重な判断が求められます。

スエードのような柔らかい素材は光の吸い方が繊細で、
コバの丸みと立ち上がりのバランスが崩れると雰囲気が損なわれてしまいます。
そのため、元の線をできるだけ保ち、自然に馴染むよう心がけています。
仕上げの考え方
靴修理には決まった“正解”がありません。
素材や形、そして履かれてきた時間によって最適な方法は異なります。
今回は、丸コバの柔らかな曲線をそのまま活かしながら、
ハーフラバーが存在を主張しすぎないように仕上げました。

「手を加えた感」をできるだけなくせるように。
靴の表情を壊さず、そっと支えるような修理を心がけています。
靴本来の雰囲気を保つ修理を

修理の目的は「直すこと」だけではなく、その靴がもともと持っていた空気や佇まいを守ることだと思っています。
スエードのやわらかい質感、丸コバの穏やかなライン——
その一足の個性を活かすために、必要な手入れを静かに加えていく。
そんな意識で一足一足に向き合っています。




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