トリッカーズのチェルシーブーツを、再びお預かりして

トリッカーズのチェルシー(サイドゴア)ブーツを、オールソールでお預かりしました。
実はこの一足、以前サイドゴアのゴム(パネル)交換でも修理をさせていただいたことがあり、今回再びご依頼いただけたことがとても嬉しく思います。
そして、本格紳士靴のオールソールをブログで扱うのは今回が初めてで、どの方向性でまとめるべきか少し悩みながら書いています。
少しでも楽しんでいただけたら幸いです。
トリッカーズらしさが詰まった一足
靴好きな男性なら、まず間違いなく知っているであろうトリッカーズ。
カントリーブーツの印象が強い英国の老舗ですが、今回扱ったチェルシーも、大きめのメダリオンや力強いシェイプなど、写真を見ただけで「トリッカーズだ」とわかる特徴に満ちています。

今回オールソールに至った理由は、元のソールの硬化とひび割れ。
経年劣化が進むと本来の履き心地からかけ離れてしまい、見た目の良さとは裏腹に快適性が失われてしまうことがあります。
オーナー様は日頃からケアを丁寧にされていて、「この冬もたくさん履きたい」とおっしゃっていましたので、しっかり打ち合わせを行い、純正と同じソールをご用意できた流れから あくまでオリジナルに忠実に再構築する 方向で進めることにしました。
――今回の修理で、最も大切にしたこと
靴の修理において「強くする」ことはいつだってできます。
ですが今回は、強さより先に「らしさ」がありました。
それはデザインでも加飾でもなく、履き主の時間と、英国靴が背負ってきた文化の延長線上にあるもの。
だから“こうしたほうが便利”“こうしたほうが長持ち”という理屈よりも、純正の設計を支点に据えることが最も正しいと判断しました。
解体から伝わる、トリッカーズの堅牢性

作業はまず、元のソールの解体から。
釘の打ち方ひとつからも丁寧さと頑丈さが伝わってきて、「トリッカーズは壊れない」とよく耳にしますが、実際に解体してみると本当に納得させられます。
履き心地を変えないための選択

今回はもともとのレザーミッドソールを流用しました。
接着剤の劣化による剥がれが全く見られなかったためです。
中物(コルク等)もそのまま流用となるので、オールソール後の履き心地の変化は最小。
持ち主の足型と時間が刻まれた内部構造を壊さないことが、今回の修理の核でもあります。
純正と同じCORINIUM社ソールについて

今回は純正と同じく英国製 CORINIUM社のグッドイヤーソール を使用しました。
出し縫いの内側にラグが深く収まる設計で、パッと見は直線的でドレッシーなコバ、接地面はタフで武骨。
このギャップこそトリッカーズのアッパーと相まったときに最大の美観を生むポイントで、一目で「それ」とわかる仕上がりを支えています。
修理後の姿と、感じたこと



仕上がり、いかがでしょうか。
極力仕様を変えず、純正の意匠・ボリューム・バランスを損なわないよう修理させていただきました。
それにしても本当に良いデザインです。品のある佇まいなのに、ラギッドにも映る。
冬の重ね着にも負けない、でも邪魔しない絶妙な存在感があります。
オールソールという仕事への思い

オールソールは「修理の華」と表現されることがあります。
実際には時間もかかり、利益率の面では決して効率の良い作業ではありません。
それでもブランドの哲学や美学に触れながら作業できるからこそ、私は強くこだわって向き合いたい修理です。
結びに
今後もオールソールの記事を増やし、それぞれの靴が持つ魅力をできる限り言語化してお伝えしていきたいと思っています。
今回もお預けいただき本当にありがとうございました。
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