トリッカーズ バートンという完成形

トリッカーズの定番モデル、バートン。
一目見て「バートンだ」とわかるのは、改めて考えるとすごい存在だと思います。
フルブローグの力強い表情、丸みのあるトゥ、ボリュームのある佇まい。
このデザインと履き心地が長い年月にわたって愛され続けているのも、老舗ブランドならではの魅力なのでしょう。
流行に左右されず、変わらないこと自体が価値になる。
そんな英国靴らしい在り方を、バートンは体現しているように感じます。
ダイナイトソールとトップリフト交換

由緒正しき英国靴ですから、ソールはもちろんダイナイト。
今回お預かりした一足は、トップリフトの摩耗が進み、ちょうど交換のタイミングでした。
トップリフトは消耗品ではありますが、歩行時の安定性や靴全体の印象に大きく影響する重要なパーツです。
しっかり直して、また気兼ねなく履いていただきたいところですね。
シートウィール(踵車)

ヒール部分のダシ縫い付近に模様が入っているのが分かるかと思います。
これは「シートウィール」や「踵車」と呼ばれる道具で付けられた飾り模様です。
この模様があるかないかで、ヒール周りの印象は意外と大きく変わります。
トップリフト交換の際の仕上げ方は何通りも方法があり、シートウィールに関しても
・飾りに触れずに成形する
・成形後にあらためて飾りを入れる
といったアプローチがあります。
どちらを選ぶかは、都度さまざまな事情によります。
話し始めると長くなってしまうのですが、要するに「オリジナルのデザインを損なわず、なおかつきれいに直したい」という職人側の葛藤があるわけです。
成形後にあらためて刻む選択

今回は、トップリフトを成形した後に飾り模様を入れる方法を選びました。
シートウィールやコテは種類が多く、私自身も折に触れて探しては少しずつ買い足しています。
こうした道具の違いが、そのまま仕上がりの表情につながる。
地味な作業ではありますが、修理の奥行きを感じる部分でもあります。
基礎修理だからこそ考えること

毎度のことながら、トップリフトが新しくなると靴全体がシャキッと引き締まり、気持ちの良い仕上がりになります。
左右のバランスも良い具合に整いました。
人の足は非常に優秀なセンサーなので、ほんのわずかな左右差でも敏感に感じ取ってしまいます。
特に長く履かれてきた靴は、歩行時の癖が摩耗として現れているため、
トップリフト交換という基礎的な修理であっても、意外と考えることが多い工程です。

派手さはなくとも、こうした積み重ねが「また自然に履ける一足」につながっていく。
トリッカーズ バートンのような定番靴だからこそ、これからも日常の中で頼れる存在として、静かに履き続けていただけたら嬉しく思います。
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