スコッチグレインに“先回りの補強”──ハーフラバー+ヴィンテージスチール

今回お預かりしたのは、スコッチグレインのタッセルローファー。
ウィングチップ×タッセルの組み合わせがお洒落、スコッチグレインらしさを残しながら遊び心の効いたデザインが印象的です。
オーナー様によると少し昔のモデルのデッドストックとのことで、納得の雰囲気です。

ソールはほぼ新品のレザーソール。
「浸水対策のハーフラバー」「摩耗防止のヴィンテージスチール」を併用した補強をご希望で、修理慣れされているご様子もあり打ち合わせもスムーズでした。
今回は作業中の写真がないため…いきなり仕上がりから見ていきます。
仕上がり:ラバーとスチールが違和感なく繋がる設計

ハーフラバーとトースチール補強を施した後のソール全体。
ラバーの密着具合と金属スチールの精密な取り付けにより、見た目と耐久性が両立している。
つま先のヴィンテージスチールと、Vibram #7673 ハーフソールが隙間なく接続し、ソール前方をしっかり守る構造に仕上げています。
- スチール厚:1.5mm
- ハーフラバー厚:1.8mm
ほんのわずかに厚みの差はありますが、数回履いていただくことでラバー側が削れ、自然に面一に近づいていきます。
「新品の状態から補強する」靴だからこそ、この変化も楽しみのひとつです。
コバまわりの処理と、履き心地への影響

コバはフィニッシャーで整え、最終的に240番のヤスリを手作業で軽く当てて質感を整えました。
靴によってレザーの質も異なるため、機械だけで完結せず、必要に応じて手加工を足しています。

修理後のコバをソール側から撮影した写真。
ハーフラバーのカットの角度をミスすると隙間が生まれてしまうなど、意外と考えることも多い…
また、スコッチグレインは他ブランドと比べてレザーソールに丸みがあるため、
ヴィンテージスチールは取り付け前にソールの湾曲に合わせて曲げる加工を行っています。
あらかじめ沿わせることでコバとの隙間が生まれないようにするためです。

ハーフラバーはいつも通り、段差が出ず、フラットな接地感になるように仕上げています。
この境目の処理は業者さんによって仕上げ方と考え方が色々なので面白いです。
ハーフラバー+スチールという“補完関係”

理論上は、ハーフラバーを貼ると屈曲性はやや抑えられます。
ただ同時に、変なクセが入りづらく、靴のアウトラインを崩さずに履けるメリットもあったり、なかったり…
そしてこの内容の際に毎回触れていますが、
ハーフラバーとヴィンテージスチールの相性は非常に良い。
- ハーフラバーが稼ぐ厚みが、スチールをはめ込むスペースになる(レザーソールを削り込み、糸を切ってしまうリスクがない)
- スチールが補強するつま先は、ラバーの摩耗が最も出やすい部位
互いの弱点を補い合う「補完関係」になっているため、
レザーソールの靴を長期的かつ機能的に履きたい方におすすめの組み合わせです。
靴の素材・デザイン・履き方・環境。
どれをとっても「一足ごとに最適解が違う」のがレザーソールの奥深さですが、今回の施工はそのバランスが綺麗に噛み合った一例でした。
オーナー様の選択によって、靴の寿命も楽しみ方も大きく変わります。
このローファーの空気感のまま、ぜひ長く楽しんでいただけたらと思います。
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