レペットのブーツに見られる加水分解ヒールを、革積み上げで再構築

バレエシューズで名高い Repetto(レペット)。
軽やかな足取りとエレガントな佇まいが魅力で、フラットシューズの代表格として知られています。
ただ今回お預かりしたのは、私自身も初めて対面した “ブーツタイプ”。
レペットの世界観がそのまま立体的に引き伸ばされたような、存在感を放つ一足でした。
レペットに多い一体型ウレタンヒール
レペットの靴にはひとつの共通点があります。
それは ウレタン素材で成形された一体型ヒール が採用されているということ。
ウレタンは軽く、成形しやすく、量産にも適した素材。
スニーカーや革靴、ブーツなどあらゆる底材に使用されますが──

経年で加水分解を起こし、崩れてしまう という弱点があります。
進行のサインとしては、
・触ると指先に粉が付く
・ベタつきや粘りが出る
・歩行時に音が変わる
といった変化が現れます。今回もまさにそのケースで、ヒールブロックが内部から砕けてしまい、土台として成立しない状態にまで進行していました。
革の積み上げでヒールを作り直す
ここから作業は少し特殊になります。
単に積み上げるだけではレペットの特徴が再現できません。
レペットのヒールは、ソールを囲うような“枠”が存在する設計。
この雰囲気を崩さないために必要となるのが──
押縁(おしぶち)という部材

押縁は、マッケイ製法やセメンテッド製法の靴に使われる飾りパーツ。
ソールとアッパーの境界を埋め、段差を滑らかに見せる役割を担います。
額縁が絵を納めるように、押縁はソールを包み込みながら全体像を整えてくれる存在です。
今回はその押縁を枠として活用し、革の積み上げヒールを内部に収める方式 を採用しました。
加水分解しない安心感と、脱落しない固定方式

仕上がりはいかがでしょうか。
ラインが自然に繋がり、見た目を損なわずに履ける状態へ。
・積み上げは革素材のため加水分解しない
・接着+釘で固定しているため突然外れる心配がない
・ヒールラインが自然に繋がり履いた時の見た目が崩れない
ミニマルな靴ほど “違和感のなさ” がとても大切です。
その意味で今回は、見た目と構造の両立がテーマでした。
実はわりとご依頼の多い修理です

この修理は珍しいものではありません。
もちろん私が独自に編み出した方法ではなく、先輩方が積み上げてきた知恵と経験があってこそ。
靴の世界には、
・無数の製法
・独自の意匠
・地域や年代の個性
が混在しています。
そのすべてに “なんとか応えたい” と考えてきた先人たちの情熱は、こうした修理を行うたびに手元に伝わってきます。
これは直せるのか?と思ったら

そういう場面に出会うことは、実は少なくありません。
それでも僭越ながら、知識も経験も総動員して向き合わせていただきます。
諦める前に、一声だけかけてください。
あなたの靴がまた立ち上がる可能性は、まだ残っているかもしれません。
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