エドワードグリーンとの不思議な巡り合わせ

以前、私物用にエドワードグリーンを購入したのですが、不思議なことにそれ以降、グリーンの靴をお預かりする機会がぐっと増えたように感じています。
いわゆる引き寄せの法則なのか、少しスピ的なものを感じてしまいますね。
ちなみに自分のグリーンは、この記事を書いている時点ではまだ修理未着手のまま…
元々の履き心地が良く、つい足を入れてしまうため、なかなか作業に回せていないというのが正直なところ。
旧ロゴ・202ラストのチェルシー

今回お預かりした一足は、靴好きの方であればすぐに気づかれるであろう旧ロゴのエドワードグリーン。
チェルシーといえば82ラストのイメージが強いモデルですが、こちらはよりクラシックな202ラストが採用されています。
端正で落ち着いたフォルムは、エドワードグリーンの中でも特に評価の高い名作と言ってよいでしょう。
修理内容の検討

オーナー様は、当初どのような修理内容にするか悩まれていました。
ソールが薄くなってきているため、ハーフラバーで延命するかどうか、というご相談です。
ただ、実際に靴を拝見すると、ソール中央は今にも穴が開きそうなほど薄くなっており、さらに年代を重ねた靴特有の接着剤の劣化も見受けられました。
ソールとウェルトは、かろうじてダシ縫いによって保持されている状態です。
もちろんラバーの取り付け自体は不可能ではありませんが、その工程の中で縫い糸の一部が切れてしまう可能性は否定できません。
今後も安心して履き続けていただくため、今回はオールソールをご選択いただきました。
仕様は、屈曲性に富んだイタリーレザーを用い、オープンチャネルで仕上げています。
ヒールのトップリフトは、実用性を重視してラバーヒールを組み合わせました。
解体して見える靴の内側

オールソールの面白さのひとつは、解体時に靴内部の構造を確認できる点にあります。
今回のエドワードグリーンでは、中物のコルクが比較的フラットに敷き詰められ、ウェスト部分のみレザーで肉盛りされていました。
シャンクには、イギリス靴らしいウッドシャンクが入っています。
そのため、このレザーはシャンクそのものというより、アウトソールのラインを美しく演出するための役割が強い印象です。
中物の成形は、履き心地とソール形状の両立に直結する重要な工程です。
見えない部分ではありますが、その分だけ神経を使う作業でもあります。
コバ形状の再現

高級紳士靴に多く見られる、ツメコバとマルコバ。
今回のグリーンは、ウェストがマルコバ、フロントがツメコバという、クラシックな仕様です。
この表情を再現するため、フィニッシャーには専用の成型カッターを使用しています。
レザーオールソールは工程が多く、どうしても手間がかかりますが、意匠を守るという点では欠かせない作業です。
履き心地に直接影響するわけではありません。
それでも「より綺麗に」「よりオリジナルに近く」仕上げたいという、職人としての矜持が詰まった部分だと思っています。
仕上がりとレザーソールの個性


仕上がりはいかがでしょうか。
ソールはライトブラウンで着色し、ウェスト部分にはオリジナル同様のアーチ形の飾りを施しています。
なお、今回のようにレザーソールには、部位によってトラ(シワ模様)が見られることがあります。
部材選別によってトラを避ける、というご要望にはお応えできませんが、これは動物が生きてきた証でもあります。
個人的には、その個性も含めて愛していただけたら嬉しいなと思っています。
コバがもたらす靴の表情

コバの仕上げも、できる限りオリジナルに忠実に。
先ほどロマンという言葉を使いましたが、コバの形状ひとつで靴の印象は大きく変わります。
中には、オールソール後に本来の意匠を無視して無理やり平コバにされてしまった、という話を耳にすることもあります。
同業者として、そのような話を聞くと少し寂しい気持ちになりますね…
直しながら履く価値

なにはともあれ、これでしばらくは心置きなく履いていただけるはずです。
直しながら長く履かれてきた靴は、やはり面構えが違います。
機能面と美観、そのどちらも大切にしながら、革靴との付き合いを楽しんでいただけたらと思います。
関連記事は下記リンク先をご参照ください。
Edward Green(エドワードグリーン)旧工場製レディースの修理|ハーフラバーとトップリフト交換

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