Vibram #7120 セーフウォーキングソールで、安心して歩ける一足へ

今回ご紹介するのはムートンブーツの修理例です。
まずは修理前の状態から。

アウトソールにはEVA(スポンジ)が使用されており、すり減りによって凹凸がほぼ消えてしまっていました。
EVAはスニーカーのミッドソールに多用される、とても軽い素材です。
しかし近年はアウトソールまですべてEVAで構成された靴が増えています。
軽さ・生産効率・コストを考えればメーカー側にとって扱いやすい素材です。
一方で履く側の視点に立つと、摩耗が進むほど面がツルツルになり、滑りやすさが加速度的に増してしまうという弱点があります。
今回のご依頼内容はまさにそこでした。
「多少ソールが薄くなってもいいから、とにかく滑りにくい靴にしてほしい」と。

そこでご提案したのがVibram #7120 セーフウォーキングソール。
独自配合のゴム「XS CITY」により、濡れた路面・大理石・マンホールといった滑りやすい路面でも高いグリップ力を発揮します。
厚みは4mmと薄めですが、耐久性は高く、さらに加工のバリエーションが非常に豊富。
一般的な耐滑ラバーとは一線を画す素材です。

仕上がりは、元のムートンブーツの雰囲気を損なうことなく、機能性を段違いに底上げできたかと思います。
今回はつま先・踵にアタッチメントを付けるのではなく削り込みで高さを整え、シルエットのバランスを崩さないように成形しました。
滑りやすい季節でも安心して履いていただけるはずです。
優秀な素材なので、ほかの修理例もご紹介します
7120は──
「滑りやすい靴だから仕方ない」「この靴は補強できないと言われた」そんなご相談で採用することが特に多い素材です。
① コンフォートシューズの削れたカカトに継ぎ足しとして


こちらもアウトソールまでEVAで構成されたタイプ。
ご予算の関係で踵のみ7120を配置し、純正パターンに沿って補強しました。
“最低限で最大効果”を狙ったアプローチです。
② 革靴のヒール補強として

革靴は本来トップリフトのみ交換できる設計ですが、「元のトップリフトの上に追加してほしい」という強いご要望から実施しました。
4mmという厚みが“ギリギリ許容できるライン”で、バランスを壊さず補強&グリップ性能向上を両立しています。
③ エイ革スニーカーのソール補強として

つま先に大きい捲りがあるソール形状。
普通に貼ると張力で剥がれるため(+エイ革は難接着)、7120を削って薄くし、グラデーション状に落とし込むことでデザインと密着性を両立させました。
④ New Balance 990v5 の部分補強として


「靴がすごく気に入っているけど、滑りやすさが気になる」というご相談から、元のソールパターンを型取りし局所的に7120を配置。
一般的なゴム硬度では成立しない内容ですが、7120なら可能です。
⑤ Balenciaga × adidas スピードトレーナーの補強として



キャリア1年ちょっとの頃の作業ですが、今振り返ってもなかなかヘビーな案件…
アウトソールのパターンを型取りしながら7120をひとつひとつ貼り分けて再構築。
ソールデザインを崩さず、ハイブランドの美意識を損なわない補強を実現しました。
注意点について
①・④・⑤のように部分的に貼り付ける補強は剥がれリスクが相対的に上昇します。
また、ウレタンやTRなど難接着素材の靴はそもそも条件が厳しい場合もあります。
そのあたりは素材特性を踏まえつつ、事前に説明・相談しながら進めてまいります。
おわりに
今回ご紹介した靴の中には、ソール形状の都合上ほかのお店で修理を断られてしまうケースも少なくありません。
ただ、靴は構造・素材・接着性・摩耗傾向を読み解けば、“まったく無理”に見えるものでも活かせる道が残っていることが多いと感じています。
Vibram #7120 はそのための材料として非常に優秀で、
「この靴は直らないのかな」「気に入っているのに滑りやすくて履けない」
そんな状況の選択肢を、もう一度つくってくれる素材です。
王道修理でなくても構いません。
できる限りご希望に近づけられるよう、靴ごとに最適な方法を全力で考えます。
もしお困りの靴がありましたら、ぜひ一度ご相談ください。
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