スコッチグレインというブランドの誠実さ

スコッチグレインは、多くの靴好きから「コスパが良いブランド」として語られますが、修理屋の視点で内部まで覗いてみると、その評価が決して誇張ではないことが分かります。
世の中には“コスパが良い”と評されながら、ソールを剥がして内部を見ると急に「なるほど…」と呟きたくなるモデルも少なくありません。
しかしスコッチグレインには、その種の残念な要素がほとんど見られません。
設定価格に対して、靴としての作り込みが本当に真面目です。
今回の症状:ハーフラバー+つま先の局所摩耗
今回お預かりした一足は、すでにハーフラバー補強が施された個体。
ところが、つま先に局所的な摩耗が進み、ラバーの上部だけでなくレザー層まで削れ込んでしまっていました。

つま先摩耗に対しては、これまでの記事でも紹介してきたように複数のアプローチがあります。
今回は、より耐久性を高める方向性でトーラバー(つま先ラバー)を選択しています。
スコッチグレイン特有のソール仕様と相性の良さ
ご存じの方も多いですが、スコッチグレインの代表的なソール仕様は以下のような構造です。
・レザーソール:約5mm
・つま先のみ:2〜3mm程度のラバーを埋め込み済み
この構造のおかげで、補強なしでもある程度の耐久性があります。
ただ「滑りにくくしたい」「より耐久性を高めたい」という理由から、ハーフラバーを追加される方も少なくありません。
しかし今回の靴は、
ハーフラバー → 埋め込みラバー → レザー層
この3層がすべて摩耗しており、まずは厚みの回復が必要でした。
革の端材で厚みを戻す“アタッチメント”工程

摩耗部分に革端材を継ぎ足し、ソールの厚みを復元します。
ここを怠ると、後で取り付けるトーラバーが正しい傾斜で収まらず、履き心地や耐久性に影響が出ます。

トーラバーは軽い傾斜を持っている部材のため、
「アタッチメント革 → レザー → 埋め込みラバー」
と積層構造を整えることで、メーカーが設計した形に近い状態へ戻ります。
仕上がり:コバ厚が整い、輪郭が締まる

修理が完了すると、まず目に入るのがコバの厚みが元に戻った輪郭の美しさです。
つま先の歪みが取れると、横から見た際の印象が一段引き締まります。
さらに、トーラバーはハーフラバーよりも強度が高いため、
以前より耐久性の高い状態へアップデートされました。
これで安心してまた歩いていただけます。
真面目な靴には、真面目な修理を

スコッチグレインのように“真面目に作られている靴”を見ると、「長く履く未来」まで考えて設計されているように感じます。
修理をしながら、こちら側もその姿勢に応えたくなる。
その誠実さに、こちらの仕事も自然と引き締まります。
真面目な靴には、真面目な修理を。
それがspace12としての矜持です。
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