ロジェヴィヴィエのソール補修(ハーフラバー+前方継ぎ足し)
Roger Vivier(ロジェヴィヴィエ)

フランスの名門ロジェヴィヴィエ。
バックルを象徴とするエレガンスで知られ、イギリスのマノロブラニクと双璧に語られることもあります。
ただ、直線基調の端正さとクラシック感が強いロジェに対し、マノロは曲線美と彫刻的バランスが持ち味、似て非なる存在ですね。
状態の把握
レディース靴あるあるですが、エレガントさを優先した薄いレザーソールは摩耗が早く、前方から穴が開きやすい傾向があります。
今回はつま先側が削れ過ぎて貫通。
アッパーは健在でしたが、ソールは要手当ての状態でした。

理想はオールソール。
ただし今回は諸条件を踏まえ、レザーソール前方を継ぎ足し → 全面をハーフラバーで覆う方針に。
レザーソールは「削る・整える・癖を付ける・足す」といった部分修理の自由度が高いのが強みです。
作業の流れ
- 下地整え:削れ過ぎた部分をフラットに整え、接着準備。

- 前方継ぎ足し:革端材を精密に合わせ、つま先部を補填。

- 面出し:フィニッシャーでハーフラバー接着面を整える。

仕上がりと効果
最後にハーフラバーを張ります。
継ぎ足し部を“蓋”するように全面で被せ、段差感を抑える。

遠目には継ぎ足し感がわからない程度に収まりました。
ハーフラバーにより耐摩耗性とグリップも向上。日常使いでの不意な擦れに対して、レザー単体よりタフになります。
リスクと正直なところ

- 元ソールの摩耗は程度の差はあるものの、先端だけでなく全体に及んでいる
- 継ぎ足し箇所がアール強めの先端で、剥離リスクが相対的に高い
- 薄くなった本底にハーフラバーを被せると、ラバーの張力で本底全体が浮くケースがある
こうしたメリット/デメリットが明確に共存する修理では、事前説明と選択肢提示を丁寧に行います。用途やご希望、靴の状態に応じて、オールソール含め最適解をご提案します。
今回の修理について
ロジェヴィヴィエの美点を守りつつ、現実的な延命策として最適な折衷案を探る修理となりました。
靴の状態や用途に合わせ、今後も一足ごとに最適なプランを設計してまいります。




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