ローファーの履き口補修|テーピング補強で強度と美観を両立

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ローファーの履き口補修とは

ローファー特有の脱ぎ履きのしやすさは、同時に履き口への負担にもつながります。

かかとを支える履き口は、日常の着脱を重ねるうちに少しずつ擦れや変形が進み、やがて裂けや色抜けといった症状に至ることも少なくありません。

今回お預かりした一足もその典型で、外側は擦れによる色抜けと一部裂け、内側には素材の劣化が見られました。

ローファーの履き口外側。擦れによる色抜けが見られる補修前の状態。

テーピング補強による履き口の再構築

今回は履き口のトップラインに「テーピング補強」を施しました。

これは細長く切り出した革で履き口をぐるりと挟み込み、縫い目に沿って補強する方法です。

段差のある縫製ラインに新たな革をかぶせることで、構造的な一体感を保ちながら補修を行うことができます。

縫製前に履き口をマスキングテープで固定し、補修位置を整えた工程中の様子。

強度と美観のバランス

縫い修理ではいつも、強度と美観のバランスに悩まされます。

補強を強くしすぎると違和感が出てしまう一方、弱く仕上げると再び同じ箇所が傷んでしまう。

今回はそのあいだを探りながら、あえて革の縁を漉かずに厚みを残したまま仕上げをしました。

余分な加工を加えないことで、元の靴が持つフォルムの美観を保ちつつ、負担のかかる履き口まわりをしっかり支える構造に仕上げています。

履き口補修後の外観。自然な仕上がりでラインがきれいに整っている。

仕上がりの印象と履き心地

履き口まわりの補修は、仕上がりの印象に大きく影響する繊細な作業です。

ほんのわずかな縫い幅や革の厚みの違いが、見た目のラインや足あたりに表れます。

今回のようにトップラインをテーピング補強することで、表情を大きく変えずに強度を高められる点がこの方法の良さです。

補修後は履き口がしっかり立ち上がり、着脱の際の安定感が戻りました。

履き口内側の補修後。裂け部分が補強され、ライニングの形状が滑らかに戻っている。

美観を保つという考え方

靴の修理には「見えない部分ほど丁寧に」という意識があります。

履き口補修のように、普段あまり目に留まらない箇所だからこそ、仕上げの美観や触感のなじみを大切にしています。

今回も補修跡を必要以上に主張させず、手を加えたことを感じさせない仕上がりを目指しました。

ローファーの履き口を美しく保つために

履き口まわりの補修は派手さこそありませんが、靴の寿命や履き心地、そして美観を左右する大切な工程です。

ローファーのように脱ぎ履きが多い靴ほど、この部分のメンテナンスが長く快適に履くための鍵になります。

今後も一足ごとの状態に合わせ、強度と美観のちょうどいいバランスを探りながら仕上げていきます。


修理を終えたローファーが工房のミシン台に置かれたポラロイド写真。

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