ORIENTAL(オリエンタル)のタッセルローファーをオールソール

今回は ORIENTAL(オリエンタル)のタッセルローファーを、レザーオールソールでお預かりしました。
2010年代にスタートした比較的新しい日本のブランドですが、ラインナップや佇まいを見ると、随所に「靴好きが作っているな」と感じさせる要素が散りばめられています。
私がオリエンタルの靴を初めて目にしたのは、まだ修理の世界に入る前。
前職で出張に出ていた際、とある靴磨き店に立ち寄ったところ、店主の方が「最近こんなブランドもあるんですよ」と教えてくれたのがきっかけでした。
デザインや価格帯、作りのバランスを含めて、なかなか乙な靴だな…と印象に残っています。
そんなオリエンタルの一足を、今回初めてオールソールさせていただくことになり、作業前から楽しみながら取り組むことができました。
交換のタイミングにふさわしいレザーソールの状態

もとのソールは、つま先に大きく穴があくほどしっかり履き込まれていました。ここまで来ると、まさにレザーソールとしての「履き切った」状態であり、交換のタイミングとしても申し分ありません。
今回は屈曲性に優れたイタリア製レザーソールに張り替え。
ドレスシューズとしての上品さはそのままに、歩きやすさも両立できるよう意識して素材を選んでいます。
解体して見えたオリエンタルらしさ

ソールを解体してみると、他メーカーと比べて細かな仕様の違いがいくつか見られました。
色々書き出すとかなり長くなってしまうので詳細は割愛しますが、「こういうつくり方をするのか」と思わされるポイントが随所にあります。
中物まわりは、コルクが劣化していたため新しいものを詰め直し、後方部のシャンク兼中物パーツは状態が良かったので流用しました。
中物はソールの形状や履き心地に直結する重要な部分です。
破損や大きな問題がないかぎり、基本的にはオリジナルを尊重しつつ整える方針で作業を行っています。
ウェルトのそり返りをおろしていくひと手間

グッドイヤーウェルトやハンドソーンウェルトの靴では、ソールを接着する際にいくつかの細かな手順があります。
そのなかでも特に大切なのが、そり返ったウェルトを、新しく貼るソール側へきちんとおろしてあげる工程です。
この「おろす」ひと手間をかけるかどうかで、完成後のコバのラインがまったく違って見えてきます。
上から見たときの収まり、横から見たときの輪郭。
どれも小さな差の積み重ねですが、仕上がりの印象には大きく影響してきます。
ヒドゥンチャネルからミゾ縫い仕様へ

元々の仕様はヒドゥンチャネルで、ダシ縫いの糸がまったく見えない仕立てでした。
今回はお客様のご要望により、糸が収まるミゾを掘り、その中にダシ縫いを落とし込む仕様へ変更しています。
見た目の雰囲気や、修理費用のボリュームも変わってくる部分ですので、こうしたディテールは事前の打ち合わせでしっかり方向性を決めたうえで作業に入っています。
ソール染色にかけるささやかなこだわり

ダシ縫いは専用機を扱う外部業者に委託し、戻ってきたあとはこちらで仕上げ工程へ。
まずはソール面の銀面(薄い膜のような層)を剥がし、染色を施していきます。
この銀面の処理をどのように行うかで、色の入り方やムラの出方が変化します。
履いていけば、やがて削れて地の色が顔を出してくる部分ではありますが、それでも最初の「仕上がり」がどう見えるかはやはり気になるところ。
自分なりに試行錯誤を重ねてきた工程でもあり、今も一足ごとに加減を確かめながら丁寧に進めています。
履き込まれた一足に、新しいソールを


仕上がりをご覧いただくと、履き込まれたアッパーと、整え直したソールとの対比がとても印象的です。
毎度のことながら、こうしてソールが生まれ変わった革靴には、なんとも言えない不思議なオーラのようなものを感じます。
機能面ではもちろん安心して履いていただけますし、靴を手に取ったときの気分もぐっと高まるのではないでしょうか。


今回の仕上げは、元の仕様に合わせて補強なしのレザーソールのまま。
路面との距離が近く、足裏でダイレクトに感触を楽しめるのもレザーソールならではの魅力です。
新しく生まれ変わったオリエンタルのタッセルローファーが、履き手の方の気持ちの良い日常にそっと寄り添う一足になれば、職人としてこれ以上うれしいことはありません。
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